本を偏重し
たいそうな趣味だと
最近は本当に
その中に入り浸っている
心と頭のスポンジが
カラカラに乾いていたのかも?
ものすごく吸いたがっている
よんでもよんでも名作が出てくるから
いっそ毎日図書館のなかで住むような
暮らしがしたいと思い始めたり
この趣味があれば
一生は事欠かないと思ったり
病の床に伏しても
これは大丈夫だ
例えばサーフィンなどという趣味は
いずれ衰え できなくなる
これは墓場まで続けられる「好き」だと
なんとも頼りになるよ、と誇らしげに
そんな話をしたら
母は
「だんだん本が読めなくなって
老眼鏡をかけて ルーペまで置いて
そうして読まなくてはならなくなると、
読む気が、しなくなるの」と
忘れていた
目もだんだん
ぼんやりとしてくること
花眼になることを。
いま世間では
オリンピック時に売れそうな
「かけるだけで自動通訳してくれる眼鏡」が
できたらしいけれど
そんなものは、若者の発想
年寄りには
もっと身近なものが必要なのだ
そう
老眼でも悠々と本が読める みたいな
そういう眼鏡を 開発しておいてほしい
「これを数十年前から望んでいましたよ、私は」と
そのときには 言おう
こういう書物に乗っかって
ただ、心と体を柔軟にして、ふんわりとしていれば
それだけで、宇宙旅行ができる。
なんとなく、他人が自分であることが愉快であり、
他人も自分であるような気がしてくる
―「連続する発見」 大庭みな子
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