ロックな文学〜イギリスが呼んでいる〜


最近はよく本を読み、英国の歴史を追いかけています


これはタイトルが気になってなんとなく読んだら、面白かった本。

「絶望という娯楽」・・・というのが、読み終わって浮かんだ言葉。

青春は萩原朔太郎から始まり、

人生の終わりで萩原朔太郎に戻っていくのかもしれないよ



さて絶望つながりで、イギリスです。


映画「メアリーの総て」


19世紀のイギリス作家・メアリーシェリーの実話映画です。

その後の文学に多大な影響を与えた作品「フランケンシュタイン」を、

18歳の若さで書いた人。


フランケンシュタインの話ね、本当は子供のための児童文学なんかじゃなかったの〜


キラキラの乙女だった彼女が、現実の過酷さに絶望していく中で生み出した…

というバックボーンを知ってから読むと、深さが違って読める。


キラキラの青年が、サイエンティストの夢に取り憑かれて作ってしまった「怪物」。

それは現実の人間に重なるところがたくさん。


フランケンシュタインはその青年の一族の名前。

怪物には、本当は名前がない。

名前がないのは、彼を認めて、呼んでくれる人がいないから。


でもこうやって物語は広がり、

怪物を作った人の名前で、呼ばれ続けるようになっちゃったという皮肉。

作者メアリーの母親は、フェミニズムの先駆者と呼ばれる人で。

メアリーの夫もそれなりに有名な詩人で。

その友達である超有名詩人・バイロンの影響で、この話を書いたメアリー。


言ってみれば文化的エリート。

それなのに、若い女性だからという理由で、

フランケンシュタインも最初は匿名で、

夫である詩人の作品のようにして出版されたんだって。


フランケンシュタインは

「処女作ならではのパッションあふれるロックな文学」という印象。

メアリー自身、そもそも、聡明だけど、

ほとばしる衝動がいっぱいのロックな人、というイメージだ。


少女はその自由と夢想を、いやがおうにも奪われる日が来る。

現実を突きつけられてね。


メアリーが子供を亡くした後に書いたフランケンシュタイン。


理想を追いかけすぎれば、人は怪物を生み出してしまう。


これがこの本のメッセージ。

本当に、人間の業を思わされるよ。


絶望をフランケンシュタインとして昇華させて、

そのあとも夫が事故死したり、色々あったようだけど、強く生きたようです。



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さてもうひとつ、イギリスの歴史が繋がっている映画。

2本続けて見ると楽しい


1)「ブーリン家の姉妹」

2)「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」 


政治の中で、男たちの成り上がりの道具にされたブーリン姉妹。

アン・ブーリンとメアリー・ブーリン。

美女で、王の気まぐれに振り回されたメアリー。

野心家で、王妃にまで成り上がって、でも若くして処刑されてしまったアン。


メアリーは沢山の悲劇をそばで見て、

最終的には確固たる意思で穏やかな生活を選んで、血筋を広げて、

今の英国伯爵にも家系をつなげた。

ただ処刑されたアン・ブーリンが産んだ娘こそが、

のちに「イギリス最高の名君」と呼ばれた、エリザベス一世なのです。


エリザベスは、野心や夫たちに振り回される母親や義母たちを見て

生涯結婚しなかった(それでバージンクイーンと呼ばれ)。


国に人生を捧げた彼女の知性で、

イギリスはついに安定して、

シェイクスピア文化が花開き、

大航海時代が始まり、

アメリカにもバージニアという地名ができて・・・


(そのあたりは内容も装丁も最高の、この本にも書いてた)

ただ、その凄腕エリザベスを悩ませたのが、

スコットランド女王の血筋を持っていて、

嫁ぎ先から帰ってきたメアリー・スチュアート。


宗教対立もあって国の分裂に繋がりかねない

「目の上のたんこぶ」なんだけど

お互い女王同士、共感し合えるところもあって・・・

というのがこの映画。

メアリー・スチュアートといえば、

尊敬するアレクサンドル・デュマ(巌窟王、三銃士の作家)が書いていると知り、

これも積読で準備しておりますよ。ふふ。

ちなみに「クイーンズギャンビット」は15世紀の英国だしね。

ああイギリスが呼んでいる。


ただ歴史が面白い、というよりは、

その時代から産み落とされた文学とか、背景に共感するのが楽しいのかも。


人間は、たまたま産み落とされた「時代」の中でしか生きられない。

それでも

時代は変わっても、人間は変わっていない部分が多いよ、とても