MAY dream / 辻征夫さん


※好きな詩の紹介です


『婚約』


鼻と鼻が

こんなに近くにあって

(こうなるともう

しあわせなんてものじゃないんだなあ)

きみの吐く息をわたしが吸い

わたしの吐く息をきみが

吸っていたら

わたしたち

とおからず

死んでしまうのじゃないだろうか

さわやかな五月の

窓辺で

酸素欠乏症で

(辻征夫『隅田川まで』より)


シアワセは、酸素欠乏症

ふふ ほんとうにそうね

そんな窓辺にいる人もいる五月

新緑の季節



こいのキラキラは

嘘みたいなものだ、と

ある日 誰かが嘲笑っていた


そうね そうかも

だけど 嘘と分かってて

キラキラできる女はいないと思うのよ