からたちの花 / 吉屋信子

大好きな本ひとつ増えました。故・吉屋信子さんの「からたちの花」。昭和8年に連載されてた少女小説です。ある少女、麻子がうまれてから15歳になるまでの、心の成長を描いた話。

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美しい姉妹に挟まれ、周囲の愛情を渇望して育った個性的な容姿の麻子。ひどく卑屈になったり、音楽の舞台に立った途端に自慢屋になったり、大病をしてからは同情引きになったり…人格を大幅に変えながら成長していく。そして最後は、文字通り「雷に打たれて」大きな目覚めをするのです

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敏感ならざる少女時代を過ごした方には、きっと共感できるはずの葛藤と渇望。数時間で一気に読み切ってしまいました。文章も本当に綺麗!こういう文字に触れていたい。使いたい。

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そして吉屋信子さんという人。投書マニアな少女時代から作家になり。独身を貫き、物を書く以外の事はできないから…と穏やかに生きた人。

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彼女は宇野千代さんなどとは対比的に「自我を出さずに書く」スタンスの女性作家なのだとか。エッセイはたしかにそうだったけど、この本読んでると、深い深い心との対話を感じました。

色んなものを心に全てしまってあって、物語の時にだけ、その部分をこっそり開いていたような